本企画の基本情報
■企画の趣旨
テーマ:我々は法律を知らずに生きられるのか?
目的:自分で取りに行く情報の強化(法律・社内規定観点)
目標:まずは法律に興味を持ってもらうことが狙い
■開催日
2018年12月9日(土)10:00~12:15
■開催場所
文京区民センタ 3-C
■プログラム
前半企画:講演
後半企画:グループワーク(グループ毎の発表、講師解説)
■ 講師
藤木 和子弁護士(健聴、手話検定1級所持)
法律事務所シブリング 代表弁護士、弁護士7年目
詳細:https://note.mu/kozukazuko/n/n71a9179ad833
前半企画:講演「 WHAT IS 法律?」
■まずはクイズから
聴覚障がい者も運転免許を取得できるようになったのはいつから?
日本の民法はいつ作られた?
■法律入門
「法律」とは、(国会国民代表)が定めた「国のルール」
なんとローマ法から5000年の歴史!⇒「人間の知恵」である
■人間の知恵
結婚制度(婚姻)結婚は「愛」だけでは続かない!?
家族・社会の安定→「目的」法律
法律でお互いの地位を縛る(保護) → 手段/仕組み
結婚=契約:合意で契約成立。離婚=解除:合意で解除(協議離婚)
合意がない→ 相手に非がないと解除不可 ⇒ 法律には「目的」がある!「どんな社会を作るか?」
■条文をみてみよう
(同居、協力及び扶助の義務)※契約上の義務
第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
同居義務(合意による変更はOK。例:単身赴任)
協力・扶助義務。内容の解釈は難しい・・・ → 相手がこれをしたら/しなかったら、「離婚」の基準は?
(裁判上の離婚) ※契約解除事由 第770条夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。※原則
配偶者に不貞な行為があったとき。(不倫)
配偶者から悪意で遺棄されたとき。(例:生活費の不払い)
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。(平成 16 年改正で追加)
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。※例外
■民事と刑事
民事:社会生活上のトラブル → 金銭賠償中心。不貞の損害賠償(昔は刑事)、品物の欠陥
刑事:犯罪 → 刑罰(罰金、懲役(刑務所))、万引き(窃盗)暴行(民事の損害賠償も必要)
交通事故(民事、刑事)民事:損害賠償(自動車保険)刑事:自動車運転致死傷罪、危険運転致死傷罪
■刑事と民事
(ベン図の包含関係で示すと) 法律/その他 > 民事(金銭賠償)> 刑事(刑罰)
■法律の目的
「法律」は「失敗する不完全な個々の人間」を前提。→それをどう解決するのが合理的か。自動車保険加入義務(無保険は犯罪)
「目的」を達成する「手段」→「不都合」→「改正」。危険運転致死傷罪(以前は最高5年→最高20年危険ドラッグの法規制(化学式)
写真1:熱弁をふるう講師
■講演を聞いて(当会スタッフ:柴田)
実は、小生も大学で法学を専攻しているのですが、法律の文章の難解さに挫折しました。例えば、商標法第26条の「...需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」のような文章など、何回読んでも意味が分かりません。このように法律は苦手です。藤木先生とお会いするのは初めてでしたが、とても明るく親しみやすいキャラクターで、お話もとても分かりやすく、特に「条文(契約内容)を見てみよう」での民法第752条、770条を例に取り上げての解説にはたいへん感心させられました。お陰で、法律を理解する勘どころがすらすらと頭に入り、とっても素晴らしい講演でした!
後半企画:グループワーク「X市の事件について対応方法をディスカッション」
■事件:X市119番通報救急車出動拒否事件
119番通報は原則出動なのに、救急車はなぜ来なかった?
X市に住むある大学生(2年生)が救急車を求めて119番通報したのに、出動せず。通報の際の状況:月日/時刻/気温/住まいの環境/通報者(本人の様子)。通報までの流れも把握。通報後の流れも把握
■グループワーク
A、B、C、Dの4グループ(1グループ6~7名)でグループワーク
通報録音テープ(約5分)でのやり取りを、字幕付DVDで視聴
ワーク1:(人命に関わる)トラブルが起きた際の対応
あなたが弁護士ならどうする?(例:遺族から相談)
あなたが市長ならどうする?(例弁護士から連絡)
A、Bのグループは弁護士の立場、C、Dのグループの市長の立場で、対応を検討する。(議論時間15分)
弁護士の立場(Aグループの発表)
訴える相手は?[黄色のポストイット] →ほとんどが「市」。他に「通信員」「国」という意見も
まず交渉?いきなり裁判?[青のポストイット] →「情報収集→交渉→裁判」、「交渉→情報集め→裁判」「弁護士相談→交渉→情報公開請求→裁判」等のさまざまな意見
どんな情報をどんな方法で得る?[緑のポストイット] →「消防署とどういうやりとりあったか→判断は正しかったか」「消防との電話情報開示/システム内容/病院での診察(カルテ)」「人柄/通信会社の記録/防犯カメラの記録/普段の勤務態度など」
市長の立場(Cグループの発表)
回答する:「行政の責任者として事実を明らかにする」「市長は人気が欲しい。“かくすこと”=イメージダウン」「市の条例に則って、この事件に対応する必要」など
回答しない:「まずは事実確認」「消防の組織に回答させる」
どんな内容?方法(電話・文書)/どんな方法で得る?誰?どこ?「お悔やみ」「質問形態(TEL・文書)に合わせる:質問は承知した/事実確認後、改めて回答」「救急119のシステム改善をしますと発表」など
ワーク2:あなたが裁判官ならどうする?紛争解決・個別事件の社会への影響
条文を見てみよう:国家賠償法 第1条国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
あなたが裁判官ならどうする?みんなでそれぞれ考えてみよう。(考察時間5分)
写真4:グループBの議論内容(寄せ書き法)
藤木先生の解説:過失とは法的評価の問題。「対応として不適切なだけなら、損害賠償は請求できない。」損害賠償の金額。市の謝罪
総括
ワークでは、自分なりに考えた「望ましい」対応と、藤木先生の解答が180度違っていたので驚きました。その解説をうかがって、なるほどと思い、同時に弁護士という仕事の重さを思い知らされました。また、自分から取りに行く情報の大切さを思い知らされました(法律の目的を知る、法律の条文に強くなる、トラブルが起きた時の勝つための情報の集め方、また、その活かし方等)
法律の苦手な私でしたが、この企画に参加できたおかけで、六法全書(法律)アレルギーを払拭できたように思います。(これで人生が変わる!)
藤木先生、素晴らしい講演とワークをどうもありがとうございました。
以上。
-レポート作成者 柴田 一郎-