本企画の基本情報
開催目的
様々な価値観をもつメンバーの中でリーダーシップを発揮する為の勘所を学び、職場のチーム活動に活かすこと
開催日
2019 年 11月 16 日(土)10:00~12:00
開催場所
文京区 文京シビックセンター5階 区民会議室A
講師
Tably株式会社代表取締役 及川卓也氏
経歴
1988年 早稲田大学理工学部卒後、日本DEC (Digital Equipment Corporation) に就職
1997年 Microsoft日本法人
2009年 Google
2015年 Increments 株式会社
2017年 独立
前半企画:及川氏による講演
講師の自己紹介
30年以上、IT業界で技術者としてと勤める。外資企業(Googleにてプロダクトマネージャーとして勤務)からスタートアップを経て、組織等を支援する会社を立ち上げる
プロダクトマネージャー
プロダクトの定義: 現在のプロダクトは、ユーザに認知して貰い、使い始めて貰い、使い続けて貰うというユーザーの行動フローを支えることから『事業』を意味する
プロダクトマネージャーの役割:様々な職種の人により構成されたチームをリードする役割であるため、Mini CEOとも呼ばれる存在である。一般的にはプロダクトマネージャーは人事権を持たないため、高いビジョンを掲げチームをまとめあげる「人間力(人を惹きつける力)」が求められる。古代ギリシャ哲学者のアリストテレスによる説得に必要な三要素(エトス:信頼、パトス:情熱、ロゴス:論理)が示す通り、プロダクトマネージャーはチームを率いるためにこの3要素が必要となる
プロダクトマネージャーの要件:ソフトウェアプロダクトであれば「技術力」+「事業ドメイン知識」+「ユーザ体験設計」の3点が求められる。現代のビジネスには、ビジネス(B:Business)技術(T : Technology)クリエイティブ(C:Creative)のバランスが必要である。プロダクトマネージャーはBTCモデルを意識してチームをリードし、足りない領域を補完したり、トレードオフの生じる領域で意思決定することが求められる
写真1:講演の様子
リーダーシップ
リーダーシップの定義:与えられたものに対して、自分ごととして取り組み、完遂すること。リーダーシップは、マネージャー職やリーダー職のみが持つ能力ではなく、自分の仕事の範囲では新社会人にも必要なスキル
M君からの教訓:たとえ話し上手でなくても、自分流のコミュニケーションを図り、チームの信頼を積み重ねることが大事である
外資系
多様性:外資系は多様性を重んじる。言語(ローコンテキスト)も文化も異なる。意思疎通のために必要なもの(たとえば、PRD Product Requrement Document)はフル活用すること
同質性の中の多様性:ミッションに対する共感度が高いという同質性がある中で、多様性を重んじるのが正しいやり方である。てんでんバラバラの人が寄りあつまることではない
HRTの三本柱:人間関係の衝突は、HRTの欠如によるものである。謙虚(Humility:世界の中心は君ではない)尊敬(Respect:一緒に働く人のことを心から思いやる)信頼(Trust:自分以外の人は有能であり、正しいことをすると信じよう)の3本柱を大事にすること。引用:Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか Brian W. Fitzpatrick
後半企画:グループワーク
目的:グループワークを通じて、リーダーシップにおける「知識」「技術」を習得すること
図1:グループワークのスライド
写真3:グループワークの様子
まとめ
課題の難易度が高く、かつ時間的な制約がある中で、セミナー室中、活発な議論が展開された。各チームそれぞれの進め方で素晴らしい結論を導き出していたが、 3 on 1 Meetingの意見が挙がったチーム4が代表として選定された。チーム4の発表内容を以下に示す
写真4:チーム4の発表
メンバーそれぞれが自己開示できる貴重な場として、1 on 1 Meetingは有効な手段であるが、チームリーダーとメンバー間の相互理解を深め、関係構築を促進するには 3 on 1Meetingが有効な手段とのこと。詳細に関して、講師から共有していただいた記事(New Manager Assimilation: 5 Simple Steps to Setting Up A New Manager for Success)を参照。講師からの総評後、参加者限定で講師著書の抽選会を実施した。『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』はAmazonで購入可能ですので、ご興味のある方は是非!
写真5:著書のご紹介
考察
東京Connect -SPUTNIK-でこれまで企画してきたリーダーシップ・インテグリティ・コミュニケーション・コーチング等で学んだ内容が見事に集約され、最後に相応しい集大成の企画となった。我々が好奇心を持って新しい学習機会を模索し、困難なことに直面したとしても屈せず努力し続けたことが本企画の実現に繋がったと信じている。
リーダーシップとは組織のトップだけが持ち得るものでなく、たとえリーダー職に就いてなくても、組織を構成するメンバー全員が持つべきものだと気付かされた講演であった。日頃から、チームメンバーと積極的にコミュニケーションをとり、チームが抱える課題を把握し、主体的に課題を解決していくことが信頼関係を築いていく上で重要である。主体的に行動するためには、上から与えられた仕事を漫然とこなすのではなく、与えられた役割の意味を見出し、指示されなくても自分事として動いて成果を出すことを癖になるまで繰り返したいと考えている。
本企画で得た私のアクションアイテムを2点お伝えしたい。セミナー等に参加したり、読書で知識を蓄えるだけなく、日頃から実践的な訓練を続け、実際にアウトプットし続けることで、ようやく学習した事の真の価値が発揮される。(1)チームメンバーには「何か困ってることはないか?」と声がけを毎日実践し、他部署からのお困り事にも積極的に対応する。自分以外の人々が持っている課題にも目を向け、一緒に課題解決に取り組むことで、社内の信頼貯金を着実に増やしていく。(2)Googleのエグゼクティブが、ちょっとした行き違いで繋がりが阻害されないよう、自分がどういう人物でどのような扱い方をすれば良いか周りに理解してもらうために、自分の『取扱説明書』を社内に公開していたエピソードが強く印象に残った。これに倣って、私も自分の『取扱説明書』を社内だけなく社外にも公開することで、社内外でビジネスコミュニケーションがより円滑に図れるように仕掛けたい。当会の初企画の教訓(Silence is Not Golden: 伝えなければ誰も分からない)を振り返る機会ともなった。信頼関係は一朝一夕で獲得できるものではないが、日頃からひとつひとつ積み上げていきたい。
最後になったが、講師の及川様には大きな文字を活用したプレゼンスタイル(情報保障の観点で非常に有用)で、かつ手話通訳者・要約筆記者のサポートが追いつける発話スピードでご講演いただき、聴覚障害のある聴衆への配慮に大変感銘を受けた。ご多忙の中にもかかわらず、我々の活動にご賛同いただいたことに深く感謝します。
以上。
-レポート作成者 桑原 暢弘 -