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国語力

更新日:2018年12月16日

本企画の基本情報

■企画の趣旨

  • テーマ:聴覚障害者の言語獲得 ~ピアジェへの挑戦!臨界期仮説を超えろ~

  • 目的:国語力の強化

  • 目標:聴覚障害者がかかえる国語力の問題点を明らかにし、解決へのマネージメントが自分でできるようになること 

■開催日

  2018年4月21日(土)午前 10:00~12:15

■開催場所

  文京福祉センター江戸川橋 視聴覚室4F

■プログラム

  前半企画(40min) 講演

  後半企画(60min) ワークショップ

■背景

  情報保障が100%の環境であっても、聴覚障害者は健聴者とのビジネススキルの格差が埋まらないのではと仮説を立て、聴覚障害者の国語力に関する数多くの研究をヒントに、その格差の主要因として「聴覚障害者の国語力」に着目した。

  国語力が弱いと、文章の読み書きだけでなく日常生活やビジネスの場でやりとりをする上で相手の意図を汲み取れず、理解のズレが生じコミュニケーションを円滑に進めにくくなる。この仮説をもとに国語力向上の秘策について講師からヒントを得るため、今回は国語力をテーマとした勉強会を企画した。


前半企画:講演

■講師

都内私立大学 研究員(健聴者)

・専門は物理化学(Ph.D所持)

・学生手話通訳、及びノートテイク支援登録者、手話サークル運営(大学、大学院)

・24時間テレビ出演等(手話歌制作)の実績


■講演内容

 タイトルのピアジェについてはここを参照。大まかな内容としては下記の3つだった。

  1. 健常者の言語獲得の仕組み

  2. 聴覚障害者の国語力と9歳の壁

  3. 大人になってもできること

 最初に下記2点について、成長過程毎に健聴者(児)と難聴者(児)の違いを踏まえながら、図で概要を説明頂いた。

 (1)言語処理と情報処理

 (2)言語はどのように獲得するのか?

 (1)では日本語を聞いたとき、あるいは文章を読んだとき、どのような処理が行われるのか学んだ。(2)では健聴者(児)は「聴く」→「話す」→「行動」→「抽象化」と聴覚を優先し言語獲得を行っていく。我々聴覚障害者は聴くことができないため、視覚のみで言語獲得を行なわざるを得ず、言語獲得すなわち国語力を身につけるのが難しくなることを学んだ。





 大人になった今、国語力を向上させるのは難しいのかというと、文法・読解・解釈などに臨界期はなく努力次第で伸ばすことはできるが、発音は大人になってからは難しいとのこと。発音獲得の臨界期は概ね思春期前だそうです。健常者も「発音のフィードバック」(自分の発音を自分の耳で聞き、確認を無意識に繰り返している)がないと発音できなくなってしまうそうです。国語力の9歳の壁は「学校で勉強する内容が9歳頃から抽象的なものになる」ことにより発生するとのこと。


 続いて講師から聴覚障害者の国語力に関する考察・気づきを頂いた。これらには私も新たに気付かされたこともありました。

「外言(他人に伝えるために表出する言語)」から「内言(思考のための言語)」の順で国語力を獲得するのであれば、聴覚障害者はそもそも外言しにくい立場なので、国語力も身につきにくい。

抽象的・論理的な問題が苦手(例:「AはCより大きく、CはBより小さい、BはAより大きく、DはAの次に大きい。A, B, C, Dを大きい順に書け」問題)

推論を求められる問題が苦手(例:小説等で「登場人物の気持ちを考えよう」問題)


 最後に国語力向上のためには「一緒に苦労してくれる仲間を見つける事が大事」と講師が説明していた。内言は外言によって強化されるのだから、とにかく書く・話す・表すことで国語力の直接強化につながる、さらに多彩な表現に触れて、使うと、イメージする力も強まるだろうとのこと。


後半企画:グループワーク 

 グループワークの目的は「一緒に苦労してくれる仲間の作り方、教え方、教わり方を体験すること」で、具体的には男女でチームに分かれて、チーム間でLINEでやりとりすることで与えられたお題を達成する、という内容でした。

 今回のお題は「LINEを駆使して意中の異性をデートに誘え!」ということで、男性チームは女性チームに対してLINEを通してアタックするという内容でした。お題を達成するためにLINEの文章を皆でワイワイ楽しく検討しました。チーム内で相手チームへ送るLINEの文章案を考える時、他メンバーの発想の仕方と解決策への筋道が全然違っていることに驚き、色々な書き方・表現を吸収した。これなら独りよがりにならず、国語力も伸びると感じた。私は女性チーム側にいたのですが、男性チームの方を誘うための駆け引きのメール、上手くキャッチボールをする方法など色々学びました。


まとめと所感

 今回、聴覚障害者がコミュニケーションをとるうえで生じる理解のズレをなくすにはどうしたら良いか、そのカギは国語力ではと考え、企画した。結果、聴覚障害者は視覚優先で言語獲得することになり、国語力を身につけるのが難しくなることが分かった。さらに、聴覚障害者は抽象化・推論が苦手な傾向があることがわかった。

 私たちは抽象化・推論を行う際、脳内にある色々な情報を頭の中でつなげていくが、聴覚障害があるために得られる情報が少なくなると抽象化・推論が弱くなる可能性があるのではと感じた。国語力向上に関しては、講師のアドバイス通り仲間を見つけて前向きに邁進したい。どちらかというと人付き合いに消極的だった私ですが、もう少し積極的に人と関わる意識を持ち、一緒に様々な課題を考えていく状況を増やしていきたいと感じました。


-レポート作成者 上田-

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